ノスタルジーな体験

わたしが子供の頃、年に一度いかないかのほんのたまにしか連れて行ってもらえないお店がありました。よそ行きを着せられて向かったのはカウンターの上野のお寿司屋さん。子供用の椅子なんてないので、座布団をいくつもあててもらって座るのですが、子供にとってはそんな堅苦しい食事は辛いだけでした。大好きだったサラダ巻きがなくてさらにがっかり、踏んだり蹴ったりの体験でした。

今、大人になってたまに無性にお寿司が食べたくなって向かうのは回転寿司店です。子供連れのお客さんでいつも大にぎわいで、子供の頃のわたしも、こんなお店なら楽しめたのかなと思うことがあります。

しかしその一方で、決して裕福とはいえなかった実家の家計の中から、若い両親が工面したであろうお金で食べさせてもらったお寿司の味が忘れられないわたしもいるのです。いいものを食べさせて味覚を養ってやりたいという親心、甘い卵が大好きだった幼い日の自分の無邪気さが思い起こされます。いつかはわたしが両親を連れて、上野の寿司屋さんに行きたいものだと思うのでした。